「骨がないのでインプラントできない」と言われたら...①

治療法1(埋め込み方向を工夫する)

傾斜インプラント

傾斜インプラント 〜骨が足りないときでも骨造成を回避できる〜

上顎臼歯部(上顎の奥歯)には上顎洞という空洞が存在するために、ほとんどの症例において骨量は少なくなっています。上顎の骨は下顎に比べて軟らかいので、歯が抜けるとすぐに骨吸収をおこし、骨量は減っていきます。インプラント埋入の時には、骨が足りなくなっているのです。
このような場合のインプラント埋入には工夫が必要であり、手術の難易度は高くなります。手術方法には、骨が少ない場所を避けインプラントを斜めに埋入する「傾斜インプラント」と、上顎洞底部に骨を造成する「上顎洞挙上術(サイナスリフト、ソケットリフト)」とがあります。
ここでは、「傾斜インプラント」について説明します。

傾斜インプラントとは

傾斜インプラントとは、上顎洞を意図的に避け、骨が残存しているところにインプラントを傾斜埋入する方法です。

傾斜インプラントとは

傾斜埋入したインプラント(黄丸内)。骨がない上顎洞を避けて、骨がある場所に傾けてインプラントを埋入する。埋入角度は、角度付きスクリュー固定アバットメントで補正する。

残された埋入部位は、上顎洞前壁と上顎結節!

骨を造成する上顎洞挙上術(サイナスリフト→リンクへ)を選択すると、治療期間が1年半程度と長くなります。短期間で治療を行えるには、傾斜インプラントを選択します。

すべての歯を失った患者さまであっても、傾斜インプラントは可能です。特に上顎洞や下歯槽神経を避け4本のインプラントを傾斜埋入して、その上から固定式の歯(フルアーチのインプラントブリッジ)を装着することですべての歯を回復させることができます。これを「オール・オン・フォー」と呼びます。

健康な上顎骨の質量と高さ 健康な上顎骨の質量と高さ 健康な上顎骨の質量と高さ

傾斜インプラントのメリット
  • サイナスリフトに比べ、術後感染リスクが少ない(通常埋入と同程度)
  • サイナスリフトより治療期間が大幅に短縮される(噛めるまで約1年半を、最短1日に短縮)
  • 条件により、即時インプラントも可能になる
傾斜インプラントができる条件
  • 傾斜インプラントは片足立ちできないため、複数の埋入本数が必須
  • 傾斜埋入の角度を補正する角度付きアバットメントはストローマン社、ノーベルバイオケア社、バイオメット3i社のみが発売しているため、3社のインプラントシステムのいずれかを導入する必要がある
角度付きスクリュー固定アバットメント

傾斜インプラントにはスクリュー固定アバットメントが必須であり、各社のアバットメント・システムに精通する必要があります。

1. SRAアバットメント

ストローマン社のボーンレベル・インプラントには、SRA(Screw Retain Abutment)を使用して埋入方向の角度補正を行います。補正角度は、17°と30°の2種類です。SRAには回転防止機構が付与されているため、単冠修復も可能です。

1. SRAアバットメント

左から、NC 17° typeA, NC 30° typeA; RC 17° typeA, RC 30° typeA
SRAは、マルチユニット・アバットメントと同様の17°と30°の埋入角度補正が可能。
回転角度補正について、90°の半分である45°でも可能にするため、同じアバットメント形状でもtypeA, typeB 2種類の接続形状が発売されている。NCでは直径が3.5ミリもラインアップにあるため、合計33種類になっている。
TypeA, Bを比較する際、一旦フィクスチャーから外して、再度SRAを取り付ける必要がある。どちらが最適かを回転させながら比較しにくいため、選択操作に慣れが必要。

ボーンレベル・インプラントの接続様式クロスフィット・コネクションは四角形のインターナル・コネクションですが、補正角度の異なるA、B2つのアバットメントがあるため、45度単位で回転方向を補正できます。45度単位なので、回転角度を柔軟に補正できます。

1. SRAアバットメント

クロスフィット•コネクションは四角形のため、90°(=360/4)単位で回転するが、アバットメントにTypeAとTypeBがあるため、45°単位の回転角度が可能になっている。

マルチベース・アバットメント

ストローマン社のボーンレベル・インプラントには、マルチベース ・アバットメントでも埋入方向の角度補正が行えます。マルチベース ・アバットメントの補正角度は、25°のみです。複数歯の治療のみに対応します。

傾斜インプラントに対応したインプラントシステムについて

マルチベース アバットメントの埋入方向の角度補正は25°のみ

3. マルチユニット・アバットメント

ノーベルバイオケア社のインプラント・システムには、エクスターナル・コネクションとトライチャンネル・コネクション、コニカル・コネクションの3種類があります。

3. マルチユニット・アバットメント

左から、エクスターナル・ヘックス(外側6角)、インターナル・トライチャンネル(内側3角)、コニカル・コネクション(内側円錐)

複数歯の治療に対応するマルチユニット・アバットメントを連結すると、3つのインプラント・システムは互換性を持ち、補綴治療がしやすくなります。

  • 3. マルチユニット・アバットメント
  • 3. マルチユニット・アバットメント
  • 3. マルチユニット・アバットメント

左からマルチユニットアバットメントは、エクスターナル・ヘックス用17°, 30°、トライチャンネル用17°, 30°、コニカル・コネクション用17°, 30°

プラットフォーム(フィクスチャーとアバットメントの接合部分)が内側三角形のリプレイス・システム(回転補正角度は120°)よりも、外側六角形ブローネマルク・システム(回転角度補正が30°)のほうが傾斜埋入の手術や補綴がしやすいため、傾斜埋入にはブローネマルクス・システムが傾斜埋入手術に向いていました。

しかし、バットジョイント(単純な接続様式)のエクスターナルやトライチャンネルには、マイクロギャップがあるため、骨吸収を起こしやすいといえました。

3. マルチユニット・アバットメント

Micromovements at the Implant-Abutment Interface: Measurement, Causes, and Consequences

Zipprich, Holger / Weigl, Paul / Lange, Bodo / Lauer, Hans-Christoph

the german journal Implantologie. (Vol. 15,2007 Issue 1, p. 31-46)

3. マルチユニット・アバットメント

エクスターナル・ヘックスやトライチャンネル・コネクションでは、インプラントーアバットメント接続面より細菌の侵入を許し、インプラント周囲炎の原因になっていた。
一方、接続部が面接触するクロスフィット•コネクション(左、中央図)やコニカル•コネクションでは、マイクロギャップは0.6ミクロン程度なので、大きさ2ミクロンの細菌(右図)は侵入できない。クロスフィットやコニカルの接続様式は、インプラント周囲炎になりにくい構造になっている。

そこで、最近はマルチユニットアバットメントはコニカル・コネクションに移行してきており、エクスターナルやトライチャンネルのインプラントは使用頻度が少なくなっています。
コニカル・コネクションは60°(=360/6)補正です。

4. ロープロファイル・アバットメント

バイオメット3i社のスクリュー固定アバットメントはロープロファイルアバットメントと呼ばれ、ノーベルバイオケア社のマルチユニットアバットメントと互換性があります。
マルチユニットと異なり、SRAのように単冠修復もできます。

4. ロープロファイル・アバットメント

サーテンコネクションはインターナルなのですが、アバットメントにエクスターナルと似た切れ込みを入れているため、30°補正が可能で自由度が高い。

4. ロープロファイル・アバットメント

サーテンの爪が開くとアバットメントが外れにくくなるので、ロープロファイルアバットメントを試適するときは、爪をOFFにして、スクリューも外しておく。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

メーカー名 インプラントの接続 角度補正
アバットメント
回転角度補正 埋入角度補正
ストローマン クロスフィット SRA
(Type A, B)
45° 17°, 30°
マルチベース
(Type A, B)
45° 25°
ノーベルバイオケア エクスターナル・
ヘックス
マルチユニット 30° 17°(NP, RP),
30°(RP)
トライチャンネル 120°(補正しにくい) 17°(NP, RP),
30°(RP)
コニカル 60° 17°, 30°
バイオメット3i サーテン ロープロファイル 30° 17°, 30°
症例1
  • 術前の口腔内写真
    術前の口腔内写真

  • 術後の口腔内写真
    術後の口腔内写真

  • 術前のX線写真
    術前のX線写真

  • 術後のX線写真
    術後のX線写真

  • 右上臼歯部の残存骨は5mm程度で、通常はサイナスリフトを行わないとインプラントは埋入できない。

  • 2本のブローネマルク・インプラントを、上顎洞近遠心の残存骨に傾斜埋入した。角度付マルチユニット・アバットメントで角度を補正し、最終上部構造を連結した。右上第2小臼歯相当部のインプラントは、先端を口蓋部にふっているので、インプラントは第1小臼歯の歯根とは接触していない。
    術後6年経過するが良好。

症例2

症例2

症例2

右上の犬歯は、破折していて保存不能であり、右上の臼歯4本も欠損していた。

前医では、「骨がないためインプラントはできない。」と説明をうけ、自由診療の入れ歯を入れてもらった。

費用をかけた取り外しの入れ歯であったが、噛みにくく、取り外しの入れ歯であることが不満だった。
また、入れ歯固定用のバネがかかっていた犬歯は、入れ歯の力で破折していた。

難易度の高いインプラント治療も可能な歯科医院を調べて、かねこ歯科インプラントクリニックを受診となった。

症例2

X線写真では、右の上顎洞底の残存骨は1~2mmであり、サイナスリフトまたは傾斜インプラントをしなければインプラント埋入は不可能であった。

患者は、早めの治療を希望したため、サイナスリフトでなく傾斜インプラントでの手術を選択した。

症例2

症例2

フラップを展開し、右上の破折した犬歯(右上3)を抜歯、直後にインプラントを埋入した。
唇側の骨欠損部には骨補填材を填入、仮歯をその場で装着する「即時荷重インプラント治療」を行った。
(リプレイス・テーパードNPx13mm)

右後方の傾斜インプラントは、歯肉下に沈めた。
埋入トルク(›45Ncm)は得られたが、傾斜インプラントは仮歯の破折などに伴いトラブルを起こしやすいため、骨結合を獲得するまでは慎重にしなければならない。
審美性にも問題ないため、右後方の傾斜インプラントは、歯肉下に沈める通常荷重とした。

(ブローネマルクMkIV RPx15mm)

症例2

治癒期間4ヶ月後に、傾斜インプラントの二次手術を行い、角度付きマルチユニット・アバットメントを連結した。

症例2

症例2

症例2

アバットメントレベルの型採りを行い、セラミックブリッジ 右上(6)54(3)を連結した。
術後4年経過するが、問題はない。

傾斜インプラント

治療法2(骨を増やして埋入する)

上顎洞挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)

上顎臼歯部(上顎の奥歯)には上顎洞という空洞が存在するために、ほとんどの症例において骨量は少なくなっています。上顎の骨は下顎に比べて軟らかいので、歯が抜けると急速に骨吸収をおこし、骨量は減っていきます。インプラント埋入の時には、骨が足りなくなっているのです。
このような場合のインプラント埋入には工夫が必要であり、手術の難易度は高くなります。手術方法には、上顎洞底部に骨を造成する「上顎洞挙上術(サイナスリフト、ソケットリフト)」と、骨が少ない場所を避けインプラントを斜めに埋入する「傾斜インプラント」があります。
ここでは、「上顎洞挙上術(サイナスリフト、ソケットリフト)」について説明します。

上顎洞挙上術とは

上顎洞底部に骨を移植・造成する方法を「上顎洞挙上術」とよびます。
骨の残存量が非常に少なく、インプラントの同時埋入が不可能な場合は、上顎洞挙上術をまず行い、6~9ヶ月後にインプラントを埋入します。(段階法)
ある程度骨が残存し、インプラントを残存骨に固定できる場合は、上顎洞挙上術と同時にインプラントを埋入できます。(同時埋入法)
手術法は、サイナスリフト(側方アプローチ)とソケットリフト(歯槽頂上アプローチ)の二通りです。

手術方法 適応症 利点 欠点
サイナスリフト 上顎洞側壁を開洞する
(横から)
洞底残存骨5mm以下 (残った骨が少ないとき) 骨造成が多くできる。目視で確認しながら手術できる。 手術の難易度が高い。
ソケットリフト
(オステオトームテクニック)
歯槽頂上から挙上する(下から) 洞底残存骨5mm以上(残った骨が多いとき) 低侵襲で手術できる。手術が容易。 骨造成量は少ない。手探りの手術のため、術野を確認できない。

上顎洞挙上術とは

上顎洞挙上術とは

上顎洞挙上術とは

上顎洞挙上術とは

サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法)
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 患者は、右上の臼歯3本(右上654)を失っていた。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) X線撮影をおこなうと、上顎洞底の残存骨は5mm以下であった。
ソケットリフトでは十分な骨造成が期待できないので、サイナスリフトによる上顎洞の骨造成を計画した。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 全層弁で歯肉剥離、側方から上顎洞を開洞、シュナイダー膜を洞内の骨面から剥離した。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 患者の呼吸に伴い、シュナイダー膜は上下に運動する。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 骨補填材を上顎洞内に填入した。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 吸収性メンブレンで骨補填材がもれないように被覆し、タックピンでメンブレンを固定した。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 通法通り、3本のインプラント(ノーベルリプレイス13mm)を埋入した。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 術後のX線写真:上顎洞を15mm程度挙上、同時に3本のインプラントを埋入している。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 術後の口腔内写真(頬側から):6ヶ月待時し、2次手術、3本の上部構造を取付けた。
サイナスリフト症例1 (インプラント同時埋入法) 術後の口腔内写真(咬合面から):6ヶ月待時し、2次手術、3本の上部構造を取付けた。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法)
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 患者は、左上4本の永久歯(左上2345)が先天的に欠損していた。
左上乳犬歯(左上C)は、先天欠損の左上側切歯(左上2)の代行をしていた。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 左上第一乳臼歯(D)は、大きな虫歯のため保存不能であり、抜歯した。
上顎洞底の残存骨は、わずか1mm程度であったので、インプラントを固定することはできないと判断した。
そこで、段階アプローチによるサイナスリフトを計画した。
段階アプローチのサイナスリフトとは、まず上顎洞の挙上のみを行い、半年程度の治癒期間を待ち、次にインプラント埋入手術を予定することである。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 全層弁で歯肉を剥離し、上顎洞を開洞、シュナイダー膜を洞内の骨面より剥離した。
呼吸により、上顎洞粘膜は上下に運動する。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 下顎枝から採取した粉砕自家骨と骨補填材を、上顎洞内に填入した。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 吸収性のメンブレンで開洞部位を被覆した。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 上顎洞挙上後のX線撮影:15ミリ程度上顎洞を挙上した。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 挙上した上顎洞内に骨が形成されるまで、6ヶ月間待時した後、インプラントを2本埋入した(ナノ・プリベイル・テーパード4/3×15mm)。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 術後の口腔内写真:
左上3本欠損の距離は2本欠損分に相当したので、インプラント2本で補綴した。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) プリベイル・インプラントは、プラットフォーム・スイッチングするため、プラットフォーム付近の骨吸収が少ない。
ナノタイトは表面性状も良好で骨結合しやすく、サイナスリフトには、有用なインプラントと考える。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 術後の口腔内写真、左上3本欠損の距離は2本欠損分に相当したので、インプラント2本で補綴した。
サイナスリフト症例2 (インプラント段階埋入法) 術後のX線写真:
左上の先天欠損歯に、サイナスリフトを併用したインプラント治療が行われた。
反対側も同様に永久歯が4本先天欠損しており、インプラント治療が将来必要になると思われる。
ソケットリフト症例1
  • 術前の口腔内写真
    術前の口腔内写真

  • 術後の口腔内写真
    術後の口腔内写真

  • 術前のX線写真
    術前のX線写真:

  • 術後のX線写真:
    術後のX線写真:

  • 上顎洞底残存骨は2mm程度。

  • 歯槽頂上からのソケットリフトで、
    13mm拳上した。
    骨補填剤と下顎枝より
    採取した自家骨を填入、
    シュナイダー膜を挙上し、
    リプレイステーパード
    RP4.3×13mmを埋入した。
    術後6年経過したが問題は
    ない。

ソケットリフト症例2
  • 術前の口腔内写真
    術前の口腔内写真

  • 術後の口腔内写真
    術後の口腔内写真

  • 術前のX線写真:
    術前のX線写真:

  • 術後のX線写真:
    術後のX線写真:

  • 上顎洞底残存骨は2mm程度。

  • 歯槽頂上からのソケット
    リフトで、10mm拳上した。
    骨補填剤と下顎枝より
    採取した自家骨を填入拳上し、
    POI42-12 HN を埋入した。
    術後7年以上経過したが、
    ペリオテスト値=-1で
    インテグレーションは良好。

骨造成術(GBR)とは

メンブレンと骨補填材などを用いて、骨を造成する方法を骨造成術と呼びます。

吸収性メンブレンのパッケージ

吸収性メンブレンのパッケージ

骨の造成部位に填入される骨補填材や自家骨は、歯肉の侵入を防ぐため、バリアメンブレンとよばれる膜で被覆されます。 歯肉の治癒速度と骨の形成速度をくらべると、歯肉の治癒速度の方がずっとはやいため、メンブレンでバリアしていないと、歯肉が骨の中に侵入して骨の形成が阻害されるからです。 骨造成に使用されるメンブレン(膜)には、吸収性メンブレンと非吸収性メンブレンの2種類があります。

非吸収性メンブレンのパッケージ

非吸収性メンブレンのパッケージ

骨造成量が少しで良い場合は、吸収性メンブレンを使用します。吸収性メンブレンは数ヶ月で自然に吸収されるため、取り出す必要がなく取り扱いが容易です。 一方、インプラントの同時埋入ができない時など、大規模な骨造成を行う場合は、チタン強化された非吸収性メンブレン(TRメンブレン)を使用します。非吸収性メンブレンは、骨造成されたあとに取り出す必要がありますが、非吸収性メンブレンよりも大規模な造成が可能です。 とくに下顎臼歯部は、骨を造成したあとにインプラントを埋入しなければ危険な場合があります。

チタン強化された非吸収 メンブレン

チタン強化された非吸収 メンブレン

下顎臼歯部のインプラント埋入では、直下に下歯槽神経があるため、神経に当たらないようにインプラントを埋入しなければなりません。下顎臼歯部には、骨の垂直的な距離が必要なのです。 ですから、骨を造成したあとにインプラントを埋入しなければ危険な場合があります。 下顎臼歯部に大規模な骨の欠損が認められる場合に、チタン強化TRメンブレンを用いて骨の欠損を垂直的に造成する方法を「垂直的歯槽堤増大術」とよびます。

ゴア非吸収性メンブレン

ゴア非吸収性メンブレン

造成した骨が固まり、インプラントの埋入が可能になるまで6~9ヶ月の治癒期間が必要ですが、骨造成後は理想的なインプラントの埴立が行えるようになるのです。

垂直的歯槽底増大術の模式図

側面図

側面図

自家骨と骨補填剤を吸収した顎堤の上に填入したのち、TRメンブレン(チタン強化膜)で被覆し、ピンや骨膜縫合で固定、縫合する。

断面図

断面図

症例

TRメンブレンを用いた下顎両側臼歯部垂直的歯槽堤増大術後のパノラマX線写真

症例

下顎の右下76、左下67は両側遊離端欠損であった。前医の指示に従い下顎の入れ歯(両側遊離端義歯)を装着しつづけたため、両側の下顎臼歯部の骨吸収が高度に進み、骨造成なしのインプラント埋入は不可能になってしまった。

インプラント埋入後のパノラマX線写真

インプラント埋入後のパノラマX線写真

下顎両側臼歯部垂直的歯槽堤増大術が成功したため、9ヶ月の治癒期間を経て、下顎右下6、左下67に3本のインプラントを埋入した。

メンブレン除去前(右側)

メンブレン除去前(右側)

垂直的歯槽堤増大術後、9ヶ月経過、TRメンブレン除去前の顎堤の写真(右側)

メンブレン除去前(左側)

メンブレン除去前(左側)

垂直的歯槽堤増大術後、9ヶ月経過、TRメンブレン除去後の骨造成された顎堤の写真(左側)