インプラントで綺麗に治したいなら...
プラットフォームスイッチング
プラットフォーム・スイッチング
前歯をブリッジで治療するのと、インプラントで治療するのを比較すると、ブリッジで治療する方がずっとずっと簡単です。 歯科医師の先生にいいたいのですが、外科手術が苦手な先生は、前歯のインプラント治療には手を出さないでください。前歯の唇側には骨量が足りません。骨造成や骨移植のテクニックなしには、前歯のインプラント治療はできないことを知っておいてください。 さて、前歯のインプラント埋入手術法や、骨造成、骨移植の手術方法は別のページに記載されていますので、そちらをご覧下さい。 このページでは、前歯のインプラント治療で特に必要な「プラットフォーム・スイッチング」という概念について説明します。
インプラントの正しい埋入手術を行っても、二次手術を行いアバットメントを取付けると、1年半後には、インプラントのプラットフォーム付近に骨吸収が起きることが知られています。 インプラントとアバットメントの接続部には、1.35mm程度の皿状の骨吸収が起きるのです。(saucerization)
(バイオメット3i社のカタログより)
インプラントの長期安定について考えれば、骨吸収しないほうが有利です。とくに骨量が限られる前歯ではそういえます。 そこで考えられたのが、プラットフォーム・スイッチングです。 プラットフォーム・スイッチングとは、アバットメントの直径をフィクスチャーの直径より小さくすることです。(水平オフセット)
アバットメントの直径をフィクスチャーの直径より小さくすれば、歯ぐきがインプラントのプラットフォームに乗っかります。 ここに乗っかることでインプラントネック部への歯ぐきの侵入を防ぎ、骨吸収が起きなくなるのです。 インプラントとアバットメントの接続部を骨から離せば、骨吸収を防ぐことができるのです。 また、インプラントとアバットメントの接続部を緊密にさせ、マイクロギャップをなくすと、更に信頼できるものになります。 ちょうど、腰のところでベルトを引っ掛けるのと、ズボンがずれ落ちないのと同じです。
アバットメントとフィックチャーが同じ直径である従来型のインプラントでは、歯肉上皮が侵入し、接続部で骨吸収を起こしやすい(左)。 プラットフォーム・スイッチングするインプラントでは、アバットメントの直径をフィックチャーの直径よりも小さくしているので、骨吸収を防いでくれる(右)。 (左のインプラントはノーベルバイオケア社のリプレイス、中央はストローマン社のボーンレベル、右はバイオメット3i社のプリベイル。)
このインプラントネック部の骨吸収を防ぐ方法をプラットフォーム・スイッチングと呼びます。 (※登録商標になっているようで、会社によって名称が異なります。この現象を発見したバイオメット3i社では、プラットフォーム・スイッチング、ノーベルバイオケア社ではプラットフォーム・シフティング; ストローマン社では、インウオード・シフテッド・コネクションと呼びます。) プラットフォーム・スイッチングには、インプラントそのものにスイッチング機能があるビルトイン・スイッチングとアダプタを介入させるスイッチング・アダプタを使う方法があります。 (アダプタをかませると、そこにマイクロギャップができますので骨吸収が起きます。ですから、ビルトイン・スイッチングの方が優れています。)
歯科医師の先生へ
バイオメット3i・プリベイル
プラットフォーム・スイッチングを発見したバイオメット3i社では、プリベイルというスイッチング専用のインプラントを発売してます。
ノーベルリプレイスPS(左) スイッチングアダプタ(右)
ーベル・リプレイスでは、スイッチング用のアダプタを発売して対応していましたが、2011年の年末にプリベイルによく似たビルトイン・スイッチングのリプレイスPSを発売しました。
ストローマン・ボーンレベル
ストローマン社のボーンレベル・インプラントでは、全ての直径のインプラントで内側にシフトしています。 4/3、5/4とか、WP→RP, RP→NPなどと考えなくていいので、ストローマンのスイッチングがシンプルで解りやすいと思います。
NC φ3.3(NP φ3.5)でもインウオードシフトしているので、マイクロミニ φ3.25ではシフトしない先発のバイオメットのインプラントよりも、後発のボーンレベルやノーベルアクティブのスイッチングの方が有利です。 ノーベルアクティブは上顎にしか使えないので、総合的に見て、ボーンレベルがシンプルで解りやすいと思います。 全社で、ワイド径φ4.8~5.0には、レギュラー径φ4.0~φ4.3のアバットメントが接続されるようになっています。今後はワイド径のアバットメントは不要になると思われます。
症例1 ビルトイン・プラットフォーム・スイッチング
前歯のクラウンが脱落、歯根は破折していた。 | |
破折した歯を抜歯した。 | |
歯肉を剥離して、骨の形態を確認した。 唇側根尖にも大きな穴が開いている。 | |
抜歯即時に、インプラント(バイオメット3i サーテン・プリベイル 4/5/4 )を埋入した。 プラットフォームを、隣在歯のエナメル質と象牙質の境目から3mm歯根側に設定した。 | |
インプラントを埋入すると、唇側の骨が足りないのがわかる。 骨には穴が空いている。 | |
ドリリングの際に採取、また、鼻の下の前鼻棘から採取した自家骨を骨欠損部に填入した。 | |
自家骨だけでは足りないので、骨補填材も填入した。 | |
吸収性メンブレンで被覆した。 | |
減張切開、水平マットレス縫合を行って創を閉鎖した。 一時的な仮歯を隣の歯とくっつけた。 | |
4ヶ月待時、二次手術を行ってインプラントの位置を確認した。 | |
1回目のインプラントレベルの型採りを行い、インプラントに直接つける仮歯を装着した。 | |
2回目のインプラントレベルの型採りを行い、最終上部構造を取付けた。 | |
最終上部構造を取付けて1年以上経過するが、骨吸収は認められない。 |
症例2 プラットフォーム・スイッチング・アダプター
クラウンがとれ、歯根が破折、インプラントの医院を探して、かねこ歯科インプラントクリニックを受診となった。 | |
周囲組織にダメージを与えないように、ペリオトームを用いて抜歯した。 | |
リプレイス・テーパード RPx16mmを、抜歯即時埋入した。 インプラントを埋入すると、唇側の骨が欠損していたため、インプラントのスレッドが露出した。 | |
骨補填材を填入して、骨欠損部を補った。 | |
吸収性メンブレンで被覆した。 | |
減張切開を行い、通法どおり縫合、仮歯を装着した。 | |
4ヶ月経過、治癒後の口腔内。手術層の裂開はない。 | |
ノーベルバイオケア社からは、リプレイス用のスイッチング・アダプタが発売されている。 | |
アダプタを取付けて、インターナルのレギュラー・プラットフォームφ4.3から
エクスターナルのナロープラットフォームφ3.5へ変換した。 |
|
二次手術、治癒後の口腔内 | |
通法どおり、アダプターレベルの型採りを行い、インプラントの上部構造を連結した。
反対側の天然歯(他医で治療された歯)よりも、インプラントの方が十分な歯肉で覆われている。 |
|
術後のX-P
3年以上経過したが、問題ない。 |