- 根管治療の重要性と進歩
- 顕微鏡を用いた根管治療
- 根管治療の成功率を
新旧術式で比較すると - 根管治療とインプラントの
成功率の比較 - 被せ物も根管治療の
予後を左右する - 病院で歯根端切除手術を行ったが、治癒しなかった2根管性の下顎第一小臼歯
歯根端切除手術を行ったが、治癒しなかった2根管性の下顎第一小臼歯
患者: 33歳, 女性
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根尖の透過像(赤矢印)と
根面の二重線(黄矢印) -
反対側の同名歯は2根と読める
(黄矢印) -
顕微鏡で観察し、未処置の舌側根管を発見した。(赤矢印)
来院経過: 半年前に某病院口腔外科で歯根端切除手術を受けたが、治癒しなかったため、紹介状をお持ちになり、当クリニックを初診となった。
検査診断: デンタルX線写真を診ると、切除手術による根尖の欠損と透過像が認められた。根面ラインは二重線として読み取れ、2根管が推測できた。
パノラマX線写真で反対側の第一小臼歯を診ると、2根管であることが読影できた。これらの情報から、「第一小臼歯は単根管ではなく2根管であり、舌側根管が未処置であるため、歯根端切除術後も治癒していない。」と診断した。
「下顎第一小臼歯の24.2%は単根管ではなく、2根管もしくはそれ以上の根管数であった。」
(The root and root canal morphology of the human mandibular first premolar: a literature review. Cleghorn BM et al J Endod. 2007 May;33(5):509-16. Epub 2007 Feb 27.)
クラウンを除去、根管形成を行なった。マイクロスコープ(手術用顕微鏡)で根管内を観察、超音波チップを用いて感染歯質を除去したところ、未処置の舌側根管を発見した。舌側根管に根管治療を行い症状改善を確認後、通法によりクラウンを装着した。
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ファイルで舌側根管を穿通(黄矢印)
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舌側根管を垂直加圧根充(黄矢印)
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治癒した歯肉とクラウン
治療を終えて
病院口腔外科で入院して歯根端切除手術を行ったが、術後の経過が良くないため当クリニックに紹介された患者であった。
術前のX線写真と最近の科学論文の情報から、舌側にもう1根管あると治療前に予想できた。
クラウンを除去、マイクロスコープ(手術用顕微鏡)で根管内を精査すると、予想通り舌側の未処置根管を発見した。
未処置根管の感染源を除去することにより良好な結果を得ており、再度の歯根端切除手術は不要となった。
他の施設で歯根端切除手術を受けたので情報はないが、おそらく歯根端切除手術時にマイクロスコープを使用していなかったのではないだろうか。
歯根端切除手術の成功率は、目視下の手術では59%であるが、
マイクロスコープを使用すると94%まで向上する(Setzer et al. J Endod. 2010 Nov;36(11):1757-65)。
マイクロスコープ設置の必要性と、文献情報収集の必要性を感じた症例であった。